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補助金支援④「上級支援者向けの心得とコツ」

補助金の上級支援者は知識も経験も豊富で、採択率が極めて高い方々と拝察致します。初級編や中級編で述べて参りました、公募要領の読み方や役所への申請書類の書き方、準拠法への適合や審査員の視点等は「そんなの当然だよ」と思われた事でしょう。しかし、上級支援者が取りこぼす例も結構多い様ですし、何よりも事業者が採択後に困った事例や、運悪く会計検査院の指摘を受けた事例もある様です(申請書の質は高いが、実態との乖離で解ります)。⇒一体、何が、まずいのでしょうか?

 

まず上級者の定義は、競争率の高い東京都を含む採択支援経験が5回以上ある方、です。採択率は3年通算75%程度以上でしょうか、直近の年度では学習効果から8割以上のはずです。ただ、上級支援者の中には補助金ブローカーと呼ばれるアコギなコンサルも居り、弁護士報酬の様な成功報酬30%の事例も有った様です。そうで無くてもブログに「寿司代も補助金で・・・チョロい・・・」の書き込みをし、不正に手を染めたと思われるコンサルも居ます。経済産業省の「不適切な・・・」通達は、出るべくして出たとの印象です。⇒適切な支援とは、どの様なものでしょうか?

 

1.真に事業者のためになる支援

上級者の場合、自らの関与先で既知の事業者からの依頼が多いと思います。一方、中小企業の社長は経営者よりも商人か職人のどちらかで、ものづくりでは経験から職人社長が圧倒的に多いです。この職人社長は、必要以上に機械装置を所望される傾向にあり、機械商社のターゲット(カモ)と成っています。

 

従って「〇〇の機械を買いたい!」との要望を受けたら、「本当にその機械が必要か?」「誰に、何を、どの様に、の事業計画イメージはあるか?」「人手は足りるか?」等々を確認し、「計画は任せる!」との答えが返ってきたら、その機械を諦める様に説得願いたいと思います。何故なら過去の補助事業で、4割程度が事業化出来ておらず、事業計画の売上利益未達は9割にも上る、と言われているからです。「税金投入」との意識が、事業者だけでなく支援者にも希薄なことが、問題の様に思います。

 

逆に、新製品や新技術開発に本気で取り組む事業者には、開発案件に向かない短期の設備投資が重点のもの補助よりも、国のサポインやNEDO補助金、東京都の開発助成金、神奈川県や埼玉県の開発補助金の活用をご検討ください。これらは大学や公設試との連携が必要な場合が多く、支援は結構大変ですので、やり遂げる意志を持った社長と支援者自らの覚悟が鍵となります。

 

2.設備投資の他の補助金と、もの補助との併願

国の設備投資に対する補助金はもの補助以外に、IT補助金、省エネ補助金、ロボット補助金、またIT・通信・メディア関連の総務省補助金等が有りますが、ものづくりではもの補助が最も組し易いと思います。

国より額の大きな設備投資補助金として、東京都の「受注型中小企業競争力強化支援事業助成金」(以下、受注型設備助成)と「革新的事業展開設備投資支援事業」(以下、革新的設備助成)が挙げられます。また、今年度のもの補助は広く浅くの方針から、先端設備導入計画等ではない、一般型の補助率は1/2に引き下げられましたので、補助率、補助事業期間、補助上限額とも、都の助成金が勝っています。

 

その代わり競争率はもの補助よりずっと高く、また社長(役員)が審査員の前で自らプレゼンを行う必要があり、ハードルが高いのが特徴です。一方受注型の実施場所は、従来東京都との隣接県(神奈川、埼玉、千葉、山梨)しか認められて居ませんでしたが、昨年度から日帰り県まで拡大されましたので、更に競争が激化したとのことです。それでも筆者は、事業計画未達の最大要因と言われている、申請書完全代筆による架空かつ実現困難な事業計画の弊害から、経営者が主体的に取り組む度合いが高い、都の助成金をお勧めしております。

 

次に同一機械装置を同一目的で、もの補助と都の助成金を併願する場合の注意点を以下に記します。

(1) 都の助成金申請時には、もの補助との併願を記載すること。補助金は下位の自治体が上位との重複を調べるルールになっており、申告漏れは虚偽不採択になる可能性もある。もの補助には都の助成金との併願を記載する必要はなく、国の補助金同士の重複チェックが徹底して行われる。

(2) 都の助成に採択されたら、もの補助を辞退(交付決定前)か、廃止(交付決定後)すれば良い。

見積書や注文書は時期によってはそのまま使えないので、時間軸には注意を要する。

(3) 補助金を過去に受けた実績申告は交付案件なので、廃止の場合でも理由とともに記載が必要。

国の重複チェックは毎年厳しくなっており、過去と同一設備(N倍化)でない事も要件である。

都の助成は社長がプレゼンと言う経営者の役割を課しており、高齢の職人社長ほど避けられますが、専務への指導で上手く実施できれば、事業承継にも効果があります。ぜひ、トライして下さい。

 

3.経営革新計画との同期

今年度は経営革新計画の(新規)「承認取得予定」により補助率が2/3になる、事業者底上げ政策を打ち出しました。既に有効な経営革新計画を承認されていても、2/3対象外となる不合理な要件です。中には変更計画を出して現在のものを終了させ、12/27から交付決定までに時期を合わせて承認を得ようとする輩も居た様ですが、関係者に無駄なことを強いており邪道と言えましょう。

 

ここでの同期とは、経営革新と設備投資は本来一体のものなので、中級で申しました様に設備投資補助金は経営革新の一部、との考え方によります。即ち、中期経営計画としての経営革新計画(不確実性から最短の3年間)に、単発でない設備投資(各々補助金申請)を盛り込み、有効な経営革新計画と各補助金を同期させることです。この中期経営計画は毎年ローリングさせるのですが、最初の立案には相当な力量を要し、もはや補助金上級者の域を出て、真のプロフェッショナル・コンサルタントでしょう。

 

真の経営計画に向けて:経営革新計画(経験浅いと5年計画)ともの補助を同時並行申請する事は、中級で取り上げた様に望ましい事です。通常では経営革新での設備投資が1年目に単発で、後の期間は売上利益が単調増加の計画が実に多いです。しかし少し考えれば解りますが、効果は設備投資後の2年目に最大となり、以降は効果が薄れて右肩下がりとなるはずです。革新的施策は単発ではなく毎年実施し、投資もその度毎に打つような計画が望まれます。

 

4.債務超過や赤字事業者への対応

補助金申請に当たって、赤字の事業者が申請できない、と言うことは有りません。たとえ、債務超過の事業者であっても、申請は可能です。

しかし、税金を投入する補助金ですから、資金調達の可能性、補助事業の遂行能力、事業者の経営基盤、倒産リスク等々を、審査されるのは当然のことです。申請書作成者に、この視点が欠落している方が非常に多いのが現状です。対応方法を以下に記します。

(1) まずBS、PLを確認していない支援者は・・・、失格ですね。会社概要で経営状況にも触れる必要があり、経営課題の把握は極めて重要だからです。

(2) 赤字の場合:経営状況表の直近2期分の決算数値で、赤字の場合はその要因と対策、および黒字化見通しを、表の直下に記載する。特に、直近期末で赤字転落の場合は、詳しく説明する。

(3) 債務超過の場合:まず、経営改善計画の有無を確認してください。あれば、その内容をダイジェストで引用し、債務超過解消見通しを記載して下さい。なければ、支援者が事業者と相談して、簡易経営改善計画を作り、債務消化解消見通しを記述して下さい。上級者ならできるでしょう。債務超過額が年商以上の場合、まず通らないと思った方が良く、申請可否を事業者と相談して下さい。

記載分量ではなくポイントを押さえた、黒字化や債務超過解消見通しを、必ず記載して下さい。

 

5.上級者ならではの失敗例

上級者が犯しがちな失敗を、以下に箇条書きで紹介します。何で落ちたの?と不思議に思った時には、以下の点をご確認ください。(6),(7)は採択後に、社長に迷惑を掛ける「失敗例」です。

(1) 補助事業の中で営利活動:販促活動や生産活動もご法度

(2) 補助対象外経費の計上:教育費は対象外、人件費等に補助事業以外の運転資金計上

(3) 他の国の補助金との重複:結構多く詐欺に近いものもあり、近年厳しくなった。

(4) 主体的でない課題解決:外注費+委託費が1/2超、実質的な丸投げ

(5) 開発を外部委託し企画のみ:外注費+委託費が1/2超、実質的に企画だけ

(6) 社長不承知:交付申請修正依頼で顕在化する「失敗」です。独断でなく、相談しながら!

(7) 資金調達不可:自らの認定支援機関確認書で済ませ、借入予定の金融機関が承知せず、借入不可!

 

6.最後に「リベンジ案件」に付いて

前年自ら支援した上級者のリベンジ案件は、必ず通す責任が有ると考えます。手順としては、

  • 前回不採択理由を事務局に電話し、審査員4名のコメント詳細を聞き取り、分析する。

⇒常套句の短い審査コメントは、手抜きと思われ、当てにできません。

(2)前回申請書に瑕疵が無かったか、公募要領と照らし合わせて一言一句確認する。

⇒多いのは脚注(小さな文字ほど重要)の要件不満足で、年度で変更される事もあります。

(3)前回申請書のチェックリストを1件ずつ、事業者に問題が無かったか、確認する。

(4)今年度の申請書を、通常の倍程度の時間を掛けて、慎重に作成。

により、確実な採択と事業者への継続支援を行ってください。

 

2018.05.12補助金太郎プロフェッショナル